『窓をあけて……』

open heart ―アイ―

 マナがカーテンをひらくと、真っ白な光が部屋を満たした。
 薄暗い部屋になじんだ目が慣れる前。
 マナは部屋を出ていった。
 私は一人になった。
 本当に、独り。

 マナがあけていったカーテン。
 雪に覆われた、世界(そと)。
 どこまでも広くて。
 どこまでも綺麗で。
 あたしには手の届かない場所で。

 その日、あたしは。
 雪の明かりが眩しくて。
 スズさんと知り合った日から、はじめて、泣いた。



 レイ。
 マナ。
 スズさん。

 私は。
 何をしてこれただろう。
 私は。
 どんな女の子だったんだろう。


 思うようにならない身体。
 ありったけの力を込めて。
 窓に少しでも近づけて。

 世界。
 窓の外。

 レイ。
 マナ。
 あなた達は、窓の外に。
 ずっと、ずっと。


 固く閉ざされた窓。
 賢明に手を伸ばしたけれど。
 あけることはできなかった。

 でも、いいの。
 閉ざされた窓越しだけど。
 外の世界を見ることができた。
 最期にマナが見せてくれた。

 スズさんの言葉。

 ――窓を、あけて……。

 ねぇ、スズさん。
 私は、窓をあけることができたよね。
 だって私は。
 今、こんなにも、陽の光に包まれているから。
 今、こんなにも、みんなのことが好きなんだから。



 その日。
 私はいつまでも、窓の外を見つめていた。
 いつまでも、いつまでも。

.....fin


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2003/09/15