『窓をあけて……』

parting ―マナ―

 ――それじゃ……ね。さよなら………。

 その日。
 あたしには親友がいなくなった。



 スズさんが亡くなった次の日。
 アイは笑顔で言った。

 ――マナも、暇じゃないでしょ。もう、こなくていいからね。

 ――今までありがとう。レイにも……そう伝えてね。

 ――それじゃ……ね。さよなら………。

 ……………。
 どうして?
 どうしてアイもレイも一人になろうとするの?
 どうして最期の瞬間まで、一緒にいようとしないの?
 あたしは、アイも、レイも、大好き。
 大好きだから、どんなときでも一緒にいたい。
 大好きだから。
 どんなときでも。



 薄暗い、アイの部屋。
 ずっと閉じられたままのカーテン。
 固く閉ざされた窓。
 どうしてアイは。
 どうしてレイは。
 窓をあけて、外を見ようとしないんだろう。
 窓をあけて、飛び出そうとしないんだろう。
 そこに世界はひろがっているのに。


 『マナはまだ子供なんだな』
 ねぇ、レイ。
 大人になるってことが、レイみたいな態度をとるっていう事なら。
 あたしは子供のままでいいよ。
 だからあたしは、カーテンを開けるんだ。

 『レイにはレイの事情があるのよ、きっと』
 ねぇ、アイ。
 大切な親友に会いに来ることもできない事情なんて。
 あたしは思いつけないよ。
 だからあたしは、アイのそばにいたかった。


 ――それじゃ……ね。さよなら………。

 うん、さよなら。
 あたしは今のアイのこと、みていたくないから。
 さよなら、だね。
 あたしはアイのこと、ずっと好きなままでいたいから。
 あたしのわがままだけど。
 でも、アイ。
 でも、レイ。
 あたしは、二人のことが、本当に大好きだったんだよ。
 本当に。



 その日。
 スズさんが亡くなった次の日。
 アイの部屋を出たとき。
 あたしには親友がいなくなった。


 「さよなら、アイ。あたしは、本当に…………」

 ――大好き、だったんだよ……。


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2003/09/15