『窓をあけて……』

lost ―アイ―

 それは、暖かい記憶。
 それは、絶望の光景。

 真っ赤にまっかに染まった世界を奔っていた。
 隣には生意気な妹。
 少し前を奔る父と母。
 だいぶ遅れてレイとレイのご両親。
 その隣にマナと叔父さん。
 きらきらと紅く輝く水辺。
 飛び跳ねた魚のうろこはルビーみたいに輝いて。
 木々の朱。
 赤。
 紅。
 朱。
 時折まじる深い闇。
 禍々しく寒々しく、空々しく。
 赤い空。
 紅い水。
 朱い木。
 ……深い闇。
 赤い世界がすべてを包んで(朱? 紅? ううん、どうだっていい)。
 すべてを包むとそれはすべて深い闇になった。
 それが、すべての始まりだった。
 それが、すべての終わりだった。

 それが。
 最期の、暖かい記憶だった。
 最初の、絶望の光景だった……。


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2002/01/27
修正 2003/04/06