『窓をあけて……』

postscript

 2002年1月4日に掲載を開始してから1年と8ヶ月あまり。
 奇しくも阪神タイガースが18年ぶりのリーグ優勝を決めた夜、どうにか完結を迎えました。


 正直読みづらい作品だったのではないかと思います。
 小説というよりは、キャラクターたちの独白を寄せ集めた詩集に近いのではないでしょうか。

 読んでくださった方の中には、あまりにも唐突に終わりすぎたように感じる方もいらっしゃるでしょう。
 語られなかった、アイの元を去ってからのレイの心情。
 語られなかった、アイの元を去ってからのマナの心情。
 語られなかった、最期を迎えるときのアイの心情。

 物語。
 本当は長く続くはずのキャラクターたちの歴史の一部を切り取って語られるもの。
 この物語は『施設』の中で繰り広げられる親友たちの日々を紡いだもの。
 『施設』を去ればその後は語られない。
 一人になってしまえば、語る相手はいない。

 初めから奇跡が用意されている物語ならば、何らかのオチをつけて完結できるかもしれません。
 しかし、流れていく時の中で、過ぎていく日々を描いたこの物語には、そういった結末ははじめから用意されていません。
 だから、『窓をあけて……』は、ここで完結なのです。



 この物語を紡いだ4人のキャラクター。
 事故で全てを失い、早すぎる死を迎えようとしているアイ。
 アイを支えようと毎日『施設』に通う親友、レイとマナ。
 『施設』に長く入っていて、死を日常のものとしているスズ。

 同じ物語を語っているはずの4人ですが、視線は少しずつ違っています。
 アイは受け止めきれない別れの恐怖を主題に、一人心の中で闘っている様子を。
 レイは親友の死に直面した、弱い心の様子、そして……。
 マナはやはり誰よりも子供で、だからこそ素直な心で現実にぶつかっていく。
 スズは知らない世界を知り、そとの世界へと向いた心の中を。

 当然『窓』も4人とも違ったものとして捉えています。
 ここまで読んでくださったみなさんの窓は、どんなものですか?
 その窓は、開いているのでしょうか。

 少しでもそういったことを感じていただけたなら、幸いです。


 ……ずいぶんとりとめのないあとがきとなってしまいました。
 最期になりますが、今まで読んでくださったみなさん。
 本当にありがとうございました。


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2003/09/15