『letter 〜Good-by my little-days・茜〜』
 雨。
 静かな空き地に降り注ぐ、天空(そら)の涙。
 雪だったら、よかったのに。
 雪だったら?
 心の中に降る雨が、もし雪だったら。
 悲しみが、絶望が降り積もって。
 空き地を覆う雪なら、いつか陽が射せば。
 また、新しい世界を生み出すけれど。
 私の心につもった悲しみに。
 私の心に、陽が射すことは、決してない。
 決して。
 そう、想っていたのに。
 そう、信じていたのに。

 浩平。
 私の閉ざされた心に入り込んできたひと。
 私の凍った心に射し込んできた、――決して優しくはないけれど、だけど――暖かい陽。
 雪の積もった空き地を照らす太陽のように。
 私の心を照らした陽は、きらきらと眩しかった。
 彼と出会って。
 私の心の中で、あの日に止まったままだった時計が動き出した。
 だから。

 だから、さようなら。
 私の幼なじみ。
 大切だった、ひと。

 どんなことも、忘れることはできないけど。
 どんな悲しみも、逃げ出すことはできないけれど。
 それでも、新しい出会いをすることはできる。
 新しい日々を重ねることはできるから。

 だから、さようなら。
 私の凍り付いた心。
 私の、幼かった日々。

 時計の動き出した私から。
 時計を止めたままだった私へ。
 新しい日々へ向かって歩き出した、里村茜から。
 悲しみに埋もれていた里村茜へ、心を込めて。
 心を、こめて。
 Good-by。
 Good-by, my little-days......

...fin

明けない夜がないように、やまない雨がないように。
悲しみに凍った心もいつか溶ける日が来る。
その時に思い出してまた悲しむのではなく、さよならを告げる。
茜には、そんな勁さがある。
私はそう感じました。

2002/01/27
【戻る】